「心がほしかった僕のおはなし0 〜博士偏〜」

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※注意※
この小説は、当サイトで配布しているフリーサウンドノベル「心がほしかった僕のおはなし」の番外編です。
そちらを読まなくても、読むのに支障はありませんが、
出来る限り、サウンドノベルをプレイしてからの閲覧をお願いします。
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(2011/2/12)

ある日、私は町外れの部品屋に訪れていた。


科学者である私は、町の者からは「変わり者」と呼ばれているらしい。
毎日研究に没頭して、いつも薄汚い白衣を纏っているし、
髪はぼさぼさ、無精ひげもちらほら。
こんな格好をしていては、無理も無いだろう。


今日私が部品屋に来ることになったのも、
私をこんな格好にした日々の研究の成果を形にするためである。


部品屋のドアを開ける。
と、同時にドアベルがカランカランとなり、店内に人が入ったことを知らせる。
奥のほうから「いらっしゃい」と、やる気のなさそうな声が聞こえてきた。
その声の主が奥から店先へやってきて、私を見るなり、「あぁ、あんたか」と言った。
この店の店主である彼は、数少ない私の友人である。


「今日はロボットを作る部品を揃えに来たんだ」
「へぇ、そうかい。毎度」
「で、これとこれと、あとあれもよろしく頼むよ」
「へいへい。ちょっと待ってな」


僕が必要な部品を言うと、彼はまた元いた店の奥へ入っていった。
余談だが、彼のしゃべり方がそっけないのは、そういう性格だから、というわけではない。
私と同じで、彼も友人が少ないのだ。だから、人と話すのがとても緊張するらしい。
こういうところも、私と気が合う点の一つだ。


しばらくすると、彼が両手にたくさんの部品を抱え、奥から戻ってきた。
部品をカウンターに丁寧に置く。
「これで言われたやつ全部だぞ」
私はひとつひとつ品物と品質を確認する。
ひとつも間違った品物は無かったし、品質も良い。
「ありがとう、これ、お代だ。釣りはとっといてくれ」
「なぁに、えらそうなこと言ってんだよ。お前も極貧科学者のくせに」
「君よりはましな生活になるさ、これが完成してくれればな」
「ふっ。言ってくれるぜ。確かロボット作るんだったよな」
「あぁ、そうだ。何でも言うことを聞くロボット。家事全般、全て「彼」に任せるつもりだよ」
「うらやましいねえ。しかし、ロボットが暴走して人間に復讐とかいう話、よく聞くよな」
「それは人工知能だろ。私が作るのは、ただのロボット。
動作も受け答えも全て私がプログラミングするから、暴走なんかしないよ」
「どうだか。お前、いつかそいつに殺られちまうかもな。家事全般を押し付けた恨みで」
「ふふっ。そうかもな」


私は、しばらく彼と雑談した後、店を出た。


町外れのこの店から、私の家までは、かなりの距離がある。
しかも両手には、重い部品の数々。
「・・・・・・はぁ」
ひとつ溜息をつくと、私は歩き出した。


店から家までの道のりには、綺麗な花畑がある。
菜の花が一面に咲き誇る、本当に綺麗な場所だ。
私は、帰り道、その花畑で休憩を取った。


荷物を置き、地面に寝転がる。
太陽が視線の先にある。まぶしい。
その太陽と同じ色の花に囲まれながら、私は目を閉じる。


これから「生まれてくる」私のロボット。
「彼」は私の一番の友人となってくれるだろう。


そう思うと、「彼」を作るのがとてもわくわくした。

「よしっ」
小さく声に出し、同時に身体にも力を入れ、起き上がる。
起き上がった反動で周りの花のいくつかが散った。
私はそのひとつを拾い上げ、部品と一緒に持ち帰ることにした。
重い荷物を両手に持ち、再び歩き出す。
休憩したせいか、先ほどよりも幾分か軽い足取りで進む。


家までもう少し。
家に着いたらさっそく「彼」を作り始めよう。
私の友人となる「彼」を。



おわり